第54章 嵐前の日常
(杏寿郎さん、槇寿郎さんと炭治郎くんの事どう思ってるんだろう…。本当は自分も教えてもらいたいんじゃ……。)
そんな心配そうな様子を耳も鼻も特に良い訳ではない杏寿郎も感じ取ったが、気が付かない振りをした。
―――
炭「はぁっ…はぁっ……、」
槇「もう動けないか。」
炭「まだ、出来ます……っ」
そう言いながらもドサッとうつ伏せに倒れたまま息を乱す炭治郎を見ると 槇寿郎は庭に下りて炭治郎の片腕を掴み、ズルズルと縁側へ引き摺って行った。
槇「やり過ぎてもそれが報われる訳ではない。無理をするな。」
槇寿郎が炭治郎を育てようとした理由のうちの一つは炎の呼吸は歴史が古かった為 比較的日の呼吸と共通点があった為であった。
そしてもう一つは炭治郎を早く育て上げ、その代わりに杏寿郎を鬼殺隊から引退させる為であった。
槇(家族を失うのはもう御免だ。桜はいなくなる。その上 杏寿郎までいなくなったら……、)
そう思いながらまだあどけない顔の炭治郎を見下ろす。
槇(幸いこの子には鬼舞辻を倒すという揺るぎない目標がある。こちらの理由が不純な物であろうと育てる事は互いに利益があるだろう。……すまないな、竈門君。)