第54章 嵐前の日常
杏寿郎は自身の芋抜きご飯に視線を落として眉尻を下げる。
(二日連続…!もしかしてこれからも続くのかしら…。)
桜はそう思いながら ちらちらと杏寿郎の様子を窺った。
杏寿郎は眉尻を下げ、おあずけを食らった大型犬の様に悲しそうな目をしている。
(不謹慎だけど可愛い…!)
そんな感情がだだ漏れになっている桜を千寿郎は凍らせてしまいそうな冷たい瞳で見ていた。
桜は悪寒からぶるっと身震いをするとその視線に気付き、たらりと冷や汗を流した。
(私も杏寿郎さんみたいに杏寿郎さんの罰で喜んでたらだめよね。不謹慎、不謹慎だ……。)
その三人の空気は継子達にも伝わり、居間の空気は若干重くなってしまった。
その様子を見て気遣い屋の炭治郎が明るめな声を出す。
炭「そういえば桜さんが禰豆子に会いたがってくれていると聞きました!今は寝てますが起きてる時、是非会ってやって下さい!」
「わ!ほんと?実弥さん…傷だらけの柱の人に刺されてから会ってなかったから心配してたの。『あれはやり過ぎだったよ』って怒ったんだけど、あの人と分かり合えるにはまだまだ道のりが、」
善「は?刺した??禰豆子ちゃんを???」
杏「君と不死川はその様に話す程親しくなったのか?」
「もう、いやあ……。」
桜は失言を繰り返す自身に嫌気が差して情けない声を出すと、俯いて何の問いにも答えずに朝餉を食べ続けた。