第54章 嵐前の日常
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千「皆さん!朝餉の準備が出来ましたよ!!」
杏「千寿郎、ありがとう!!皆は手をよく洗ってから向かうように!こら!嘴平少年はきちんと洗えるようになるまで俺と一緒だぞ!!」
伊「俺にはちまちま手を洗う必要なんかねーぜ!大体飯が冷めちまうだろうが!!」
「伊之助くん、私も洗いに行くから一緒に洗おう。早く洗えば冷めないから大丈夫よ。」
伊「……………………。」
伊之助は優しく微笑む桜に手を握られるとそっぽを向きつつも付いて行った。
杏「むぅ。桜に懐いているようだな。あの暴れん坊な少年に懐かれるとは少しばかり羨ましい。」
炭「伊之助は桜さんと誰かを重ねて見ているようです。それでなのかな…と。」
善「なんだか大事な人っぽいよな。しつこく聞くし。」
杏「……そうか。よし、君達も早く手を洗うと良い!!今日の朝餉も美味いぞ!!!」
メニューも知らないでそう言う杏寿郎の笑顔は輝いていた。
杏「よもや……。」
千「どうかしましたか、兄上。朝餉を楽しみにしていた声が聞こえたのですが…不服でしたでしょうか。」
そうにっこりと微笑む千寿郎の顔にはどこか黒い陰が見える。
そう、この朝のご飯もさつまいもご飯だったのだ。