第54章 嵐前の日常
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「てやっ!!!」
炭「わわ!!あぐ…っ!」
休憩中、炭治郎に体捌きの相手を頼んでいた桜は 炭治郎の力を利用しながら足を払い、バランスを崩す炭治郎に掴まれて一緒に倒れはしたもののマウントを取ることに成功した。
揉み合いの末 仰向けに倒れた炭治郎の上で桜は目を輝かせながら炭治郎の顔を覗き込んだ。
「今のどうだったかな!?本当はうつ伏せにしたかったんだけど、でも結構上手くできたと思うの…!」
炭「桜さん…、と、とりあえず俺の上から、」
炭治郎が言い終わらないうちに立ち会っていた杏寿郎が無言で桜をひょいっと抱き上げる。
「杏寿郎さん、見てましたか!?」
杏「うむ、あれは無しだ。」
「………………え……?」
杏「相手に仰向けに倒れられたら君は捕まるぞ。何度も言うが君は柱の元まで逃げられるようになれば良い。力ではとても敵わないのだから危険な事は考えないでくれ。」
「………はい…そうでした…。」
桜がそう言って俯くと杏寿郎は少し呆れた様に微笑み、小さく息をついてからぽんぽんと頭を撫でて桜を元気付けた。