第54章 嵐前の日常
―――
「炭治郎くん、伊之助くん、おはよう!」
炭「桜さん!おはようございます!」
伊「……………。」
「あ、またお返事しないんだから。伊之助くんもおは、」
伊「なあ、お前しのぶの家族じゃねぇのか。」
治療中、混乱した隊士に『花柱様』、『カナエ様』と呼ばれることはあったが、『しのぶの家族なのではないか』と問われたことは初めてであった。
それはカナエを知る隊士は蝶屋敷の姉妹に世話になった事がある者が殆どであり、既に二人が姉妹である事を知っていたからだ。
「…違うよ。」
(カナエさんとしのぶちゃんが姉妹だって知らないんだ。じゃあカナエさんと知り合いなわけじゃないのかな…。)
伊「しのぶも俺と会ったことがないって言った。お前は?あるだろ、俺と会ったこと。」
「私もないよ。列車の時がはじめて。」
(カナエさんについては分からないけど…。)
伊「だけど、お前の方が…、お前は会っただろ。」
炭「伊之助、お前お前って失礼だろ!桜さんだ!!」
そう窘めてくれる炭治郎の頭を撫でながら桜は伊之助の前に立つ。