第54章 嵐前の日常
杏「昨夜の桜は随分と素直で赤裸々に行為の感想を述べていた。酷く愛らしく他のどの男にも知られたくはないと思った。君は聞いたのか。」
「え………私が、なにを…赤裸々に…?」
赤くなって無防備な表情を晒す桜の手を取って背中に隠すと 杏寿郎は大きな燃える目で善逸を見つめる。
善逸はビクッと体を震わせて上体を起こすと 蛇に睨まれた蛙の様に縮こまりひたすら首を横に振った。
杏寿郎は暫くその様子を見ていたが、纏う空気を和らげると善逸に大股で歩み寄り 肩にぽんっと手を置いた。
杏「そうか!それはすまなかったな!!」
そう朗らかに言いながら肩をぽんぽんと軽く叩く。
しかし、和やかな空気も束の間。
薄く目を開くと肩をガッと掴み善逸の耳元に口を寄せた。
杏「少年、嘘は良くないな。聞こえてしまうものは仕方ないが桜には分かられないようにしてくれ。」
善「ひぅっ」
杏「では準備が出来次第、庭に集まってくれ!!鍛錬をするぞ!!!桜、おいで。」
「うん。今何て言ったの?」
杏「今日の鍛錬についてだ!!」
その言葉に桜は少し納得していない様な顔をしたが善逸に手を振ると部屋を出て行った杏寿郎に続いた。
それを見送った善逸は腰を抜かしてしまい暫く立てなかったのだった。