第54章 嵐前の日常
千「反省無く触れた訳でないのなら良いです。朝餉の準備に行くので失礼します。」
「あ……うん。」
呆気無く去っていく千寿郎の後ろ姿を見ながら桜は呆けた声を出した。
杏寿郎は弟を見送ると漸く桜の頭に触れて優しく撫でた。
杏「やっと自分の意志で触れられるな。酷く長く感じた。…では次は我妻少年を癒しに行くぞ!!」
「あ…そっか、眠れなかったかもしれないのね…。」
桜はそう申し訳無さそうな声を出しながらも杏寿郎の大きな手に自身の手を乗せ頬を緩ませた。
それを見た杏寿郎も嬉しそうに目を細める。
そしてするりと頭から頬へ手のひらを滑らせると隙をついて桜に口付けをした。
「……っ!!お外では、」
杏「早く行くぞ!!」
「あっ……もう…!!」
桜は罰が撤回されて早々に翻弄され、赤くなって眉を寄せながら杏寿郎の後を追った。