第53章 ※不自由な夜
「うん、なんとかなった…かな。」
そう言う桜の目の前には二組の布団が干されている。
その下に杏寿郎は持ってきていた紙を置き、飛ばされないように石を上に置いた。
杏「一晩に二度も俺が粗相をした事になるが 皆呆れはしても疑いはしないだろう!」
「炭治郎くんと伊之助くんしか信じないんじゃないかな…。あ、でも炭治郎くんは鼻が良いんだっけ…。」
杏「そうだが精液はともかく きっと潮の匂いは知らない。精液に関しては俺が夢精したとでも思うのではないだろうか。」
「むせい……?」
桜は離れに向かいながら首を傾げる。
その不思議そうな顔を見ると杏寿郎は愛おしそうな表情を浮かべた。
杏「夢の中で君に良からぬ事をして寝たまま射精をしてしまう事だ。」
その言葉に桜はぶわっと赤くなる。
そしてパッと視線を外して歩みを速めると 杏寿郎はそれを悠々と追いながら言葉を続ける。
杏「今回の件は嘘になってしまうが、君が夢に出てきて夢精をした事は確かにあるぞ。」
それを聞くと桜は耐えられずに離れへ向かって走り出す。
杏寿郎は面白がる様な笑みを浮かべたままそれを歩いて追った。