第53章 ※不自由な夜
杏「其処ならばなんとか髪で隠れるだろう。もっと噛んで良いぞ。」
「うう"ーーー……。」
自業自得とはいえ、杏寿郎に反撃も出来ずに翻弄され続け 桜は思わず唸り声を上げる。
するとすっかり機嫌が戻った杏寿郎は愉快そうに笑った。
杏「まるで歳下の…いや、幼い猫の様だぞ。それにしても腹筋に関心を持たれた事があったので体に好意を持たれている事は知っていたが、君は俺の匂いも好きなのか。知らなかったな。好きなだけ嗅ぐと良い。」
そう嬉しそうに言われ、更に『変わった趣味だな!!』と笑われると桜は真っ赤になる。
(私が悪い…平常心、平常心……。誠意を持ってきちんとやるって決めたんだから……。)
そう思いながら何も言わずに再び腰を動かし始めた桜に杏寿郎は少し眉尻を下げた。
杏「桜?気を損ねてしまったのだろうか。決して馬鹿にしている訳ではないぞ。それに "変わった趣味" と言ったが俺もそれを持っている。君の匂いが好きで堪らない。付けている白檀の香りではなく君自身の匂いが、だ。前にも言ったが君の匂いで自慰を何度も、」
「そ、そこまで言わなくていいの!」
顔は相変わらず首元に埋めたままではあったが桜が言葉を返したことに杏寿郎は嬉しそうな顔になる。
そしてその表情のままぽふっと桜の髪に顔を埋めて真似をする様に匂いを嗅いだ。