第53章 ※不自由な夜
「お日さまみたいな…落ち着くのにどきどきもする匂い。知ってる女の人いるのかな…。体、くっついてるから杏寿郎くんの熱い体温が直接伝わってくる。毎日がんばって鍛錬してる、男の人らしい体…。」
その口調を聞くと杏寿郎は桜が心の声をそのまま口に出してしまっているのだと気が付いた。
「いい匂い…好きな匂い……息する度にくらくらする。中も、熱い。明日から一人で我慢できなくなっちゃいそうで怖い…杏寿郎くん、…杏寿郎くん……大好き…杏寿郎く、」
杏「随分と饒舌だな。」
潮時だと思った杏寿郎が放った言葉に桜はサッと青ざめる。
「………わ、私……今の…声に…出して…………?」
顔を上げられないままそう呟くように訊くと杏寿郎の頭が頷く様に動いた。
杏「愛らしいな。すっかり毒気を抜かれたぞ。もっと聞いていたかったのだが心の声を盗み聞いている様なので止めてしまった。君の意思でもっと伝えてくれないか。」
その願いに応えることなく桜は顔を赤くしたまま杏寿郎の髪を梳いて照れ隠しをする様に強めに噛み付いた。
しかし杏寿郎はそれにも嬉しそうな声を出した。