第53章 ※不自由な夜
「ふ、う……っ、」
その晩 既に味わった筈のその熱は相変わらず好ましい刺激を与え、桜は震える上体を支えようと杏寿郎の首に腕を回す。
そして杏寿郎の頭を抱き 髪に顔を埋めながら腰を前後に動かし始めた。
なんとかしがみつきながら腰を動かし続けるとみるみる桜の頭は蕩けていく。
「…杏寿郎くんの匂いがする……。」
甘い声以外、何の言葉も発していなかった桜がそう唐突に言うと 刺激に耐えて眉を顰めていた杏寿郎は気を取られて視線だけ桜の項へ向けた。
その愛おしげな声が心地良く、続きがあって欲しいと願った杏寿郎は桜を見つめ続けながら黙って只々次の行動、言葉を待った。
すると桜は杏寿郎の髪に顔を埋め直してふわふわとした感触を確かめるように頬擦りをしながら再び口を開いた。