第53章 ※不自由な夜
杏「……何故あの様な事を言ったんだ。君らしくもない。」
「……それが…………、なぜか、杏寿郎さんをやきもきさせたくなっちゃって…、拗ねてたのもあると思うんだけど……。気を引きたかったのかも…。」
そう考えながら言う桜を見て杏寿郎はほっとしたように肩の力を抜いた。
杏「俺の余裕を奪って手を出させようとでもしたのか。ほとほと困った子だな。」
子供扱いをされて桜は思わず眉を寄せたが 自身が大人気ない事をしたのは事実であった為にそのまま黙り込んだ。
その様子を見つめると杏寿郎は少し考える様に目を細めてから桜の横にごろんと寝転がる。
杏「もう二度としないと言うのなら良い。この話は終いだ。後は "好きに" してくれ。」
「………………え……?」
杏「罰は受けなければならない。なので俺からは君に触れない。顎を傷めてはいけないので口でするのも無しだ。それは変わらないが、そうだな…君は確か『今夜は頑張る』と言っていたな。」
それを聞いて桜は初め杏寿郎が何を言わんとしているのか理解出来なかった。
それは今まで杏寿郎が桜に甘く優しかった為だ。