第53章 ※不自由な夜
「な、んで………、」
杏「ああ、良いな。涙が滲んでいるぞ。」
そう嬉しそうに言われると桜は杏寿郎の帯からパッと手を離し、急いで涙を拭った。
杏寿郎は涙を拭おうと瞳の潤いが失くならない事を確認すると微笑みながら自身の帯を解いていく。
そして袖を抜き、腰を浮かせて完全に脱ぐと桜に視線を戻して軽く首を傾げた。
それが『君はまだ脱がないのか。』という意味だと察すると桜は赤くなりながりもするすると浴衣を脱いでいく。
そして完全に脱ぐと杏寿郎に恐る恐る視線を戻した。
杏寿郎はそんな桜の体をまじまじと見つめてから満足そうな笑みを浮かべた。
杏「うむ!綺麗なままだな!!時透と不死川が側に居たのなら問題は無いと分かってはいたのだが、それでも何処ぞの男に華を付けられていたらと想像するだけで腸が煮えくり返りそうであったのでこの目で確認できて良かった!!」
「…………そんな事…されないよ。」
杏寿郎は『頭では分かっている!』と言いながら再び桜の体を眺める。
そうされて桜が思わず胸を隠すと杏寿郎は眉を寄せた。