第53章 ※不自由な夜
杏「恥じない素直な君も愛らしくて好ましいが、こうもぼんやりされると酔わせて手篭めにしているような気分になる。」
そんな事を言っている間に桜は帯を解き終わり、襟を掴んでするりと肩をはだけさせると完全には脱がずに中途半端に羽織った状態になった。
谷間や多くの肌は見えるものの、肝心な部分は見事に隠れていて杏寿郎からは見えない。
その状態のまま桜は杏寿郎の帯に手を掛ける。
杏「待て。」
「…どうしたの………?」
少し不満そうな声色を出しながらも桜は素直に手を止める。
杏寿郎はそれに少しほっとした様に眉の力を緩めると桜の浴衣の端を摘んで首を傾げた。
杏「非常に扇情的だ。これはわざとか?出来れば俺が自由に触れられる時にしてもらいたいのだが。」
「……これが…扇情的………隠れてるのに?」
杏「見えそうで見えないと却って煽られて脱がしたくなる。」
杏寿郎の熱っぽく真っ直ぐな声色を聞くとぽーっとしていた桜の瞳にみるみる恥の色が強く戻ってくる。