第53章 ※不自由な夜
「やっと入った…………熱、い………。」
桜は杏寿郎の首に腕を回すと腕と中をきゅうっと締めた。
杏「…っ、桜……、待て。」
「うん…。」
頷きながらも桜は杏寿郎の体にすりっすりっと猫の様に頬擦りを始め、それは首筋から肩の方へずれていった。
それに従って浴衣がはだけると杏寿郎はきちんと着付けている桜の上体を見つめる。
杏「桜、俺を脱がすのなら君も脱いでくれ。」
「……………え……?」
桜は自身が意図的で無いとはいえ杏寿郎をはだけさせてしまっていた事に気が付くと どこか焦点の合っていない目をしながら眉を寄せて自身の行動について反省をした。
そして自身の中で折り合いをつけると一度頷き、今度は隙だらけの表情を浮かべながら素直に自身の浴衣の帯を解いていく。
杏「……桜、大丈夫か。意識がきちんとしていないのなら無理をするな。自分が何をしているかきちんと分かるか。」
「浴衣を脱ごうとしています。」
杏「うむ、それはそうなのだが。」
杏寿郎は心配そうな声色を出すと桜の肩を掴もうとして再びもどかしそうに拳を握った。