第52章 受け止め方
「うん、持ち直しました。」
杏「初めてにしては切り替えが早いな。」
「亡くなられた方を軽んじている訳ではないんですよ。ただ……、ただ、あの隊士さんは私が蹲ることを望まない方だと信じる事にしたんです。」
そう言うと杏寿郎は再び桜の頭を撫でた。
杏「ああ、それで良い。」
「杏寿郎さん、撫で過ぎです。」
杏「むぅ。」
不満そうな声に桜が小さく微笑むと杏寿郎はザーッと足を滑らせて勢いを殺し 立ち止まって桜を下ろす。
まだ夜が明けない暗い道で杏寿郎の色素の薄い髪が時折雲の隙間から漏れる月明かりに透けて光って見えた。
「杏寿郎さん……?」
杏「今、君の表情を見て君に口付けをしたいと思った。だが、俺からは触れてはいけないのだろう。……昨晩も久しぶりに共に寝れた君にもっと触れたかった。だが…君はそうではなかったようだな。」
「昨晩は…その、別に杏寿郎さんを求めてない訳じゃないですよ。 」
杏「それなら……、」
杏寿郎は言葉を切ると じっと桜を見つめる。