第52章 受け止め方
杏「今は二人きりで任務中な訳でもない。声を押し殺す必要はないぞ。桜、俺には甘えてくれ。俺の前では強くあろうとしなくて良い。」
「………杏寿郎さんが人をだめにするような甘やかし方をする……。」
杏「むぅ!?心外だぞ!今君は只の女性だろう!!」
「自分は甘えないじゃない。」
杏「そんな事はないと思うが…。甘えていなかったら君を何度も困らせていないと思うぞ。それに君が俺の甘やかし無しで生きられなくなるのも悪くない。」
「そんな……見た目は爽やかなのにタチ悪いよー…。」
桜は指先で涙を拭いながらそう途方に暮れた声を出すと杏寿郎の首に腕を回して横首に頬擦りをする。
言葉に反する甘えたな様子に杏寿郎は安心した様に頬を緩めた。
杏「爽やかだろうか!」
「うん。爽やかで健やかで…任務同行の時は使命への一途さから尊くさえ感じました。」
杏「尊いか…恐れ多いな。」
「杏寿郎さん、任務の時あんまり表情を崩さないから余計に人間らしさを感じにくいんです。」
桜は顔を首元から離すとまだ潤む瞳でちらっと杏寿郎を見る。
「…任務じゃない時くらいは二人きりじゃない時にも表情を崩せばいいのに…女の人の前以外で…。」
杏「無意識なので難しいな!!」
「そう………。」
それ以降 桜はその件について話すのを諦め、代わりに杏寿郎が話す継子三人組の話を時折微笑みながら聞いた。