第52章 受け止め方
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杏「桜…?父上が入れ替わりで帰っていったのだが如何かしたのか。…その血は……、」
「重症の方が八人いらして……そうだ…槇寿郎さんのこと放ったらかしに…後で謝らないと…、」
杏「待て、顔色が悪いぞ。此処に来てくれ。」
杏寿郎はそう言うと抱き寄せる代わりに自身の胸を指差す。
蝶屋敷の玄関で隠も隊士もまだ居る中、桜は迷った後ふらふらと歩み寄ると自ら杏寿郎の胸に収まり深く呼吸をした。
桜は強く握っていた拳を緩めるとみるみる呼吸を穏やかにしていく。
「…お家に着くまでは気を抜くつもりなかったのに……。しのぶちゃん…、」
一連の流れを見ていたしのぶは声を掛けられるとすぐに頷いた。
し「今日はありがとうございました。他の七人も桜さんがいらしてくれなければ死を待つばかりでしたので…。煉獄さん、あとは頼みます。」
杏(桜は患者が八人と言っていた。一人亡くなられたのか。)
杏「ああ、任せてくれ。では失礼する。」
杏寿郎は自らくっついてくれた桜を横抱きにするとぎゅっと腕に力を込めてから走り出した。