第51章 家族
杏(覚悟はしていたが、それでも堪える。このまま体を密着させていては少々辛いが一度離せば抱き締め直せないな。)
そう思いながら既に他の男に見られたであろう桜の寝顔を眺め、嫉妬を孕む欲情を抱くと杏寿郎は額に青筋を浮かべながら目を瞑った。
杏(結ばれる前は散々煽られようと耐える事が出来た。初心を思い出せ。自分をきちんと制御するんだ。)
そんな努力は報われ、眠りについた桜にくっついているうちに安心が移った杏寿郎の瞼は次第に下がり、無事眠りにつくことが出来た。
その少しあと、入れ違いに桜が目を覚ます。
(……いけない。一人でするの忘れてた…。)
そして桜は杏寿郎を揺すって起きないことを念入りに確認するとこっそりと処理を終え、再び眠りについたのだった。
―――
千「おはようございます、姉上。」
「お、おおおはようございます、千寿郎くん…。」
翌朝、洗面所へ顔を洗いに来た桜は先に居た千寿郎に思わず後退りをした。
その様子に千寿郎は眉尻を下げた。