第51章 家族
「…………杏寿郎さん、自由に触れて下さい…。」
杏「駄目だ。」
「…もう。頑ななんだから……。」
桜はそう言うと杏寿郎の手を自身の頬に当てさせてから優しく口付ける。
何度も愛を伝えるように優しく啄むようにすると杏寿郎は応えてしまいそうになる体を抑えるように眉を顰めた。
その様子を薄く開いた瞳で捉えた桜は思わず笑みを溢す。
(本当に真面目だなあ…。この様子じゃ一ヶ月はなしかな……。)
そう思うと顔を離し、杏寿郎の頬を優しく包んで微笑む。
「おやすみなさい。杏寿郎くん。」
杏「桜……、」
そして久しぶりの杏寿郎の腕の中で安心しきった桜は呆然とする杏寿郎を前に小さな寝息をたて始めた。
それと同時にするっと桜の手が布団へ落ちそうになると杏寿郎はそれを頬に留めたままにしようと手を伸ばしたが直前で槇寿郎の罰を思い出し、そのまま布団に落ちる小さな手をただ見つめた。