第51章 家族
「…………気持ち、楽になった…?」
その言葉に杏寿郎は少し目を大きくした後微笑んだ。
杏「うむ!随分と楽になった!次の担当が決まるまでは俺の任務に同行すると良い。」
杏「……皆も実際に目の当たりにすれば認めざるを得まい。」
「……?…………うん。」
桜は低く小さく付け足された言葉を聞き逃しながらも杏寿郎の微笑みにつられる様に柔らかな笑みを浮かべた。
そんな表情を愛でる様に杏寿郎は目を細め、少しもどかしそうにただ頭を撫で続けた。
杏「…桜。前に言った桜並木の事を覚えているか。俺が欲を優先している間に咲いてしまったそうだ。もう大して残っていないかもしれないが…一緒に行ってくれるだろうか。」
満開の桜の季節は過ぎ、杏寿郎が死にかけてからあと少しで二ヶ月が経とうとしていた。
「私、葉桜けっこう好きですよ。桜の淡い色に合う若い緑色がきれいで…。是非連れて行ってください。」
杏「そうか…ありがとう。楽しみだな。」
そう穏やかに言う杏寿郎の額に矛盾するようにめきっと青筋が浮かぶ。