第51章 家族
杏「不死川にも…この様に甘えたのか。何度も言うが彼は駄目だぞ。」
「私と実弥さんの間には噂なんてたってない。変な空気になったりしないし、皆の前でも妹って呼んでくれるから。」
噂の話に戻ってしまい、杏寿郎は自分で自分の首を絞めると眉尻を下げながら頭に置いていた手を動かし努めて優しく撫で始めた。
杏「自分の事を棚に上げてすまなかった。だが俺とその女性隊士の間にも何もない。それは君も頭では分かっていると思うが、上手く割り切れないのだろう。互いに解消しよう。どうすれば良いだろうか。」
「その人に会いたい。会ったら仲良くなれると思う。そしたら多分そんなに嫉妬しない。」
杏「それは良いな。彼女は君に命を助けてもらったことがあるらしく君を慕っていた。喜ぶと思うぞ。」
それを聞いて桜は少し固まる。
「強くて凛々しくて命を落としそうだった女性隊士さんって……植草 薫さん?」
そう言う桜はいつもの雰囲気を纏い、目も少し輝いていた。
一方、杏寿郎はフルネームで覚えていた事に少し意外そうな顔をした。
杏「よく覚えていたな。……治療する度に隊士の名を訊いているのか?」
「男の人は治したらすぐ柱の方が引き剥がしてくれるけど 薫さんとは治した後も少しお話したの。そっかあ。なんだ…薫さんかあ。」
桜が一気に脱力するのを見ると今度は杏寿郎の胸にもやもやとした気持ちが生まれる。
杏「まだ解決していないぞ。君と不死川について俺は良くない気持ちを解消出来ていない。」
それを聞くと桜は少し困った顔をした。