第51章 家族
杏「だがどういった表情なのかが分からない。防ぎたいものだが…。」
桜は答えを聞きたそうな杏寿郎に顔を覗き込まれると 視線を逸らしながら困った様に眉尻を下げた。
「どうって……、他の人の前で惚気けなければいいんだと思う…。」
杏「なるほど。君を想う時の顔、ということだな。」
濁したかったことをあっさりと言い当てられると桜はほんの少し頬を染めてから杏寿郎に視線を戻す。
「その顔のままそのお義母さまに似た女の人と話したから その人を好きだと思われた。…たくさんの人に。」
桜がそう不満そうに言うと杏寿郎は頭を撫でそうになりながら謝る。
それをもどかしく思うと桜は杏寿郎の片腕を自身の体に回し、もう片方の腕を頭へ遣った。
「……甘やかして欲しい。」
杏寿郎は不謹慎だと思いながらその言葉を一瞬嬉しく思ったが、すぐに再び実弥の桜を見る愛おしそうな表情が脳裏に浮かんだ。