第51章 家族
その小さな震える頑なな背中を見つめていると実弥の事を思い出した杏寿郎は 実弥がいつ桜を抱き締めたのか分かってしまい、又 泣いて弱った顔を見させてしまったのだと思い至ると焼けるような熱い嫉妬心に胸を支配された。
杏「……不死川はここへ来ないぞ。俺の腕の中で泣いてくれないか。」
「…………………え……?」
呆けた声と共にずびっと鼻を啜る音が響く。
その声色から桜が泣いていることを隠していたのだと知った杏寿郎は立ち上がると桜の布団まで歩いて傍らに膝をついた。
杏「隠れて泣かないでくれ。気持ちも押し殺さなくて良い。ぶつけて構わない。喧嘩になろうと君の事を嫌いになることなど無い。仲直り出来ないことなど無い。」
その言葉を聞いた桜はころんと素直に寝返りを打つと幼い泣き顔を見せながら杏寿郎に腕を伸ばす。
杏寿郎はそれに誘われるまま布団へ入った。
杏「最近はよく泣いていたのか。……不死川は…その顔を見たのだろうか。」
「うん…。『見れたもんじゃない』って言ってた。」
杏「……そうか。きっとそれは『早く泣き止んで欲しい』という意味だ。君の…先程言っていた表情の話はこれと同じなのであろうな。確かに耐え難い。本当にすまなかった。」
そう言うと杏寿郎は自身の頬を軽く摘んで眉を寄せる。