第51章 家族
(今回の噂騒動、杏寿郎くんに悪気がないことは分かってる。でも…、もやもやとした黒い感情をどうしたら良いのかが分からない。杏寿郎くんと話せば解消するかと思ったけど喧嘩になっちゃうし…。)
杏寿郎は音こそしないものの、桜が小さく震えているのを見て泣いているのだとすぐに気が付き慌てて体を起こした。
杏「桜、戻ってきてくれ。」
するとこれ以上自身の感情に杏寿郎を巻き込むまいと思っていた桜は食い気味に首を振った。
(怒って泣いて…、わたし本当に子どもだ。呆れられてしまう。困らせたくない。私の中できちんと片付けないと…。)
一方、いつもと違う空気を纏っていた桜を怒らせ泣かせ、終いには拒絶をされた杏寿郎は上体を起こしたまま眉尻を下げていた。
杏(様子が妙だった。もっときちんと聞き役に回るべきであったのに言い合いをしてしまうとは不甲斐ない。)
杏「……桜、話をしよう。そちらの布団へ行っても良いか。」
まだ泣いている事を分かられていないと思っている桜は再び食い気味に首を横に振った。