第51章 家族
杏「……怒っているのか。この様な君は初めて見る。」
「怒ってるのかな。よく分からない。少し苦しい。杏寿郎くんに甘えたいのにすごく冷たくしたい気もする。」
杏「今冷たくされるのは耐え難いな。思っている事を口にする事は出来るか。」
そう問われると桜は杏寿郎の胸に額を押し当てながら目を瞑る。
「面白くない。杏寿郎くんの特別な顔…、表情、他の人に見せないでほしい。噂も…やだ。お義母さまに似てる若い女の人と話してる杏寿郎くん想像するとすごく汚い気持ちが溢れてきそうになって辛い。自分の心が狭くて嫌になる。」
桜は珍しくそうハッキリと言い切ると杏寿郎を見上げる。
その瞳は怒っている様にも見えた。
「貴方も私のことを言えない。噂になるまで他の人にあの表情を見せ続けるなんて…。訊いたことなかったけど隊士さんに言い寄られたことってあるの? "馬鹿みたいに見合い話が来る" 杏寿郎さん。」
桜の冷たく棘のある言葉に杏寿郎は少し眉尻を下げた。