第10章 お見送りとお父さん
杏「いや!今日はない!見廻りだけしてくる予定だ!」
そう言うとバサッという音がした。
着替え中という事を忘れて何だろうと振り返ると、目の前で羽織りが揺れていた。
その裾にあるのは炎のような模様と形。
よく見ると杏寿郎は記憶で見た鬼殺隊士とおなじ服を着ていた。
「鬼殺隊の隊服……。」
杏「ああ!そうだ!!」
振り返って杏寿郎は笑う。
「その羽織りかっこいいですね。杏寿郎さんにぴったりです。」
杏「ありがとう。これは煉獄家の誇りだ。」
そう目を細めて言いながら部屋の隅へと歩いていき、日輪刀を拾い上げベルトに差し込んだ。
近くでよくよく見るとその刀も凝った物だと分かる。
白い柄と鞘は正義感の強さを思わせ、鍔は炎の形をしている。
(髪、目、脚絆、羽織りに刀…全身燃えるコーデ……。)
それが似合ってしまうからすごい。
無言でまじまじと見る桜を横目で見ると杏寿郎は、
杏「珍しいか!!」
と笑った。
桜はハッとして照れながら小さな声で、"はい" と答えた。
杏寿郎はまた笑うとしゃがみ込んで桜と目線を合わせる。
杏「共に行けるよう早く強くなれ!!」
短くそう言い、頭を撫でてから杏寿郎は部屋を出ていった。