第10章 お見送りとお父さん
猫の姿で杏寿郎の部屋の前に立つ。
「杏寿郎さん、いらっしゃいますか?」
杏「桜か!いるぞ。申し訳ないが今手が離せない。入ってきてくれないか?」
「はい!」
(ちょうどいい…練習だ……!)
今度こそと襖に猫の手をかけてみる。
少し隙間があったおかげで拍子抜けするほどスルスルと開けることができた。
誇らしい気持ちのまま、"失礼します!" と部屋に入る。
「………っ…むぐっ!!!」
桜は悲鳴を上げそうになったが必死で耐えた。
「杏寿郎さんんんっ!手が離せないじゃなくて次からは着替えてるって言って下さいーっ!!」
シャツのボタンを閉めている最中だった杏寿郎。
慌てて背を向けて桜は少し泣きそうな声を出す。
裸だったわけでもないのだが、桜は若い男性にとことん免疫がなく 胸の肌の色が見えただけで慌ててしまった。
杏「む?了解した!ところで何の用だ?」
「頼みます。任務へ行かれるのかなと気になりまして…。」
桜は鬼の姿を思い出す。