第51章 家族
「…………噂になった女の人ってどんな人なの…?」
その唐突な言葉に杏寿郎はきょとんとした後、顎に手をやって少し考えるように斜め上を見た。
杏「そうだな。腕の立つ凛々しい女性だ。少し母上と似ているな。」
「そうなんですか…。」
(男の人ってお母さんと似た女の人を好きになるって聞いたことある…。杏寿郎くんにその気はないって知ってるけど…けど……、)
桜は杏寿郎から視線を外すと手のひらをぎゅっと握って拳を作る。
(………面白くない。)
杏寿郎は無意識に不機嫌な感情を表に出してしまっている桜を見て目を丸くさせた。
杏「桜?」
桜は呼び掛けられて我に返ると布団に近付いて杏寿郎の側に座り、その首元に顔を埋めた。
「もういいや。」
どこか自棄のような声色でそう言うと桜は杏寿郎の首に噛み付き、華も散らしていった。