第51章 家族
杏「しかし困ったな。」
「…………お芋?」
杏「君の事に決まっているだろう。」
「たしかに杏寿郎くんから触れられないってむずかし、」
杏「噂についてだ。」
杏寿郎は離れの一室に入ると襖を閉めながら低い声でそう言った。
それを聞くと罰についてだとばかり思っていた桜はハッとした後 考えるように眉を寄せる。
(私達の関係を広めるかどうかはさておき、隊士さん達を断る時の理由に気を付けないと……。)
「杏寿郎くん達の噂については任せるよ。私は……『想いを寄せている人がいるのでごめんなさい。』って答えるようにしてみる。そうすれば遠慮して抱き着いてきたりしないだろうし…。」
その言葉と安心させるように微笑んだ桜に杏寿郎は眉を顰めた。
杏「相手が諦めなければどうする気だ。より『渡したくない』と強く想われればいよいよ何をされるか分かったものではないぞ。」
「それは…………そんな事…、」
杏「ない、等とは言わないだろうな。」
杏寿郎はそう言って桜の顔を覗き込みながら肩を掴もうとしたが 手が肩に触れる直前で『むぅ。』と言って手を引いた。