第51章 家族
(……なんだかさっきから私ばっかり怒られてる…。確かに私も悪いことしたけど 杏寿郎くんはもっと怒られていいはずなのに……。)
杏「桜の価値観については簡単に直りそうにありません。俺が変えていくので今は見逃してやってください。」
「杏寿郎さん…。」
杏寿郎が怒られるように仕向けようかと企んでいた桜は杏寿郎に毒気を抜かれると震える声で名を呼んだ。
槇寿郎と千寿郎は頭を下げたままそのやり取りをするシュールな二人を見つめながら同時に溜息をついた。
槇「もういい、今日は下がれ。それから杏寿郎。やはり芋だけでは納得出来ない。同じく一ヶ月 桜にお前から触れる事は許さん。以上だ、早く下がれ。」
杏「それは……ですが、桜は寂しい思いを、」
槇「桜からなら構わん。良いから下がれ!」
杏「失礼します……。」
「失礼します…おやすみなさい……。」
杏寿郎は項垂れながら廊下に出ると自然と桜の手を握って離れへ向かおうとした。
しかし、先程 槇寿郎に言い渡された事を思い出すと握る直前でピシッと固まる。
杏「……これは堪えるな…。」
桜は眉尻を下げて落ち込んだ様子の杏寿郎を見ると、パシッと自ら杏寿郎の手を取った。
「これなら良いのよね?早く行こう、杏寿郎くん。」
そう言って誘う様に軽く手を引っ張りながら桜が微笑むと杏寿郎はやっと明るさを取り戻し、『うむ!!!』と頷いてから桜の横に並んだ。