第51章 家族
千「頭が回らなかったのは随分最近になってからなのではないのですか?兄上の愛情表現はとても分かりやすいですし、それを一番良く分かっているはずの姉上がすぐに噂を気にするとは思えません。」
「………………それは……、」
桜が困った様に言葉を詰まらせると今度は槇寿郎が口を開く。
槇「お前、何より先に迷惑と言ったな。」
「…え…………?」
槇「『迷惑を掛けた』と謝ったな。確かに大迷惑だったが普通はもっと違う事を言うだろう。」
そう言われるとピンときた桜は手を揃えてパッと頭を下げた。
「ご心配をお掛けしました!!すみません…!」
何も返事をされず、頭を上げようかどうしようか迷っていると槇寿郎は大きな溜息をつく。
槇「お前は暫くそうしていろ。」
「え"っ!!この格好けっこうきつい…、」
千「家族であるはずの父上や僕にまで妙な気を遣って頼らず 姉上が一人で何かを抱え込んでいた事を知った時、僕達がどう思ったと思いますか。姉上が逆の立場ならどう思いますか。」
「………………すごく嫌です……。」
千「ではそのままの姿勢で頑張って下さい。」
普段なら情けない格好で震える桜を大きな声で応援してくれそうである杏寿郎は何も言わずに優しく桜の背を撫でながらピリピリとしている千寿郎に冷や汗を流していた。