第51章 家族
千「兄上。」
杏「すまなかった!!!」
杏寿郎は早々に自ら頭を下げたが千寿郎の瞳は桜を見る時よりも明らかに冷たい。
千「一ヶ月、お芋抜きです。兄上のお膳に上がることはありませんし、外で食べることも許しません。もし食べたら僕は兄上ともう口を利きません。」
杏「よも…………。」
槇「好物を抜くだけなど……子供でもあるまいし流石にぬるいのではないのか。」
千「兄上が耐えがたい事は限られています。普通の罰では兄上にとって罰にならない可能性が高いかと。桜さんを取り上げる訳にもいかないですし。」
その言葉に槇寿郎は納得した様な不服そうな顔をしたが、移した視線の先で土下座をした杏寿郎から明らかに大ダメージを受けている重たい空気を感じ取ると漸く満足そうに口角を上げた。
そしてその横で土下座し続けている桜に視線を移す。
槇(桜には流石にやり過ぎなのでは……。)
槇寿郎がそう思ってそーっと隣に居る千寿郎の様子を窺うと千寿郎は槇寿郎を見つめていた。
千「仕切ってしまってすみませんでした。後は父上にお任せします。」
大の大人が土下座したまま暗い空気を纏っている状況でバトンを渡され、咄嗟のことに弱い槇寿郎は一瞬固まってしまった。