第51章 家族
(雰囲気に飲まれてビクビクしてしまったけれど、やっぱり杏寿郎くんが原因を作らなければ…、)
槇「杏寿郎……。」
同じ事を考えていた槇寿郎はそう怒りを孕んだ声を出すと杏寿郎に向かって拳を上げた。
「ま、まってッ」
―――パシッ
桜が思わず庇おうとする前に杏寿郎は槇寿郎の拳を手のひらで受け止めた。
槇「手で受け止めるな!!!」
杏「すみません!!反射的に受けてしまいました!!!」
それから何度か槇寿郎は杏寿郎に拳骨を食らわせようと躍起になったが 杏寿郎が悪気無く全て手で受け止めてしまった為、息を切らしながら諦めた。
杏「すみません。鍛錬ではないと頭では分かっているのですが…。」
杏寿郎に眉尻を下げられると槇寿郎は眉を顰める。
槇「謝られると余計に腹が立つからやめろ。……桜も話し合いから逃げようとすべきではなかったぞ。勘違いをするまでの過程は精神的に磨り減っていたのなら理解出来るが、以前 話し合いをする大切さを俺に説いたのはお前だろう。」
「…………はい。」
(…そうだった。私、槇寿郎さんには散々話し合いを迫っておいて自分は逃げてしまっていたんだ…。)
千「兄上。」
場が落ち着いたように思えた頃、響いた静かな声に桜の肩は大きく跳ねた。