第51章 家族
「ご、ごめんね。わざとじゃないよ。今だけじゃなくて今までもたまに敬語になりそうなときあったんだ。杏寿郎くんってなんとなく年上っぽい雰囲気があるから…。」
杏「そうか!では年上だと思って甘えると良い!!」
「それはまた別かなあ。」
杏寿郎が不満そうな声を出すと桜はくすくすと笑いながら杏寿郎の首に腕を回して身を寄せる。
「では来世で私より本当に年上になっていたら…思う存分甘やかしてください。」
それに杏寿郎は『任せてくれ!!』と大きな声で答えて嬉しそうに笑った。
――――――
杏「桜を連れて帰りました!!」
「た、ただいま帰りました…。」
もう日付けを跨いでいたが杏寿郎の言葉に慌ただしい音が複数近付いてくる。
最初に玄関へやって来たのは千寿郎ではなく槇寿郎だった。
槇寿郎は桜が無事である事を確認すると下げていた眉尻をぐっと上げて厳しい顔付きになる。
槇「連絡を絶って旦那から逃げ回るとは何を考えている!!離縁でもするつもりか!!!それなら養子に…、いや、まず何故俺のもとに連絡を寄越さない!!杏寿郎と何かあったのならば俺を頼れば良いだろう!!!」
「も、申し訳ありません…!たくさんご迷惑をお掛けしました…!!」
槇「迷惑…、お前は……桜、とりあえずそこに座れ。」
槇寿郎はそう低い声で言うと玄関の石畳の床を指差した。