第51章 家族
杏「緊張しているのか。少し体が強ばっているぞ。」
「そうですね……少し。」
杏「気構える必要はない、皆例外なく寂しがっていたので喜ばれるぞ。」
「そうですか…。」
桜は嬉しさと申し訳無さから少し複雑そうな笑みを浮かべた。
(槇寿郎さんに怒られそう…千寿郎くんにも……。)
そんな事を考えている桜を見て心情を察した杏寿郎は微笑んだまま覗き込む様にぐっと顔を近付ける。
杏「確かに父上と千寿郎は寂しさの他に何か思うところがある様ではあったので怒りもするだろうが、心の内ではとても喜ぶ筈だ!安心しろ!!」
「……杏寿郎さんの精神力がうらやましい…。喜んでくれたとしても怒られるのを分かってて明るくなれませんよー…。」
その言葉を聞くと杏寿郎は表情を変えないまま暫く黙った後 瞬きをして視線を前へ戻す。
杏「特段凄い事ではない。それよりいつまでその口調でいる気だ。…まだ怒っているのだろうか。」
「…あ…………。」
そう問われて初めて自身が敬語を使っている事を自覚した桜は口元を押さえた。