第50章 すれ違い
し「ここは愛を語らう宿ではありませんので二度とあの様な願い出はなさらないで下さいね。」
それを聞いて杏寿郎が先程しのぶに放った言葉を想像した桜は真っ赤になる。
「しのぶちゃん、ごめんね………本当に…。」
し「桜さんのせいという訳ではありませんが……そうですね、もう少し教育して頂けると助かります。」
(…教、育…………。)
杏「胡蝶まで俺を犬の様だと言うのか。」
し「ふふ、よく分かりませんが仲直りされたようで良かったです。煉獄さんには屋敷前を酷い形相でうろうろされて迷惑していたので。話し掛けても耳に届かないのか無視されててとても悲しかったんですよ。」
し「桜さんは桜さんで煉獄さんの名前を出すだけで今にも死にそうな顔をしてまともに会話出来ませんでしたし…本当に困っていましたので良かったです!」
杏寿郎と桜はしのぶが笑顔の下で怒っている事を確信すると大人しく並んで頭を下げた。
―――
「お家に帰るの久しぶりです…。」
駆けだした杏寿郎の腕の中で桜はそう呟くと 笑みを浮かべている杏寿郎を見上げる。
すると杏寿郎は目だけを動かして桜を見つめ、少し面白がるように更に口角を上げた。