第50章 すれ違い
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杏「…曲名?」
「はい。杏寿郎さんを想いながら弾きました。必ず教えます。」
杏「それは楽しみだな。」
「あと……、杏寿郎さんが私を忘れてても私の方から口説き落としてみせます!」
そう言って微笑むと杏寿郎はパッと顔色を明るくさせる。
それを見た桜はほっとした様に息をついた。
杏寿郎はそんな桜の柔らかい表情を愛でる様に撫でるとバッと立ち上がって戸へ向かう。
「どうしたんですか?」
杏「胡蝶に此処に泊まれないか訊いてくる!!」
「え、あのっ…………行っちゃった……。」
(杏寿郎さん、実弥さんも帰しちゃいそうだな…明日から任務同行はどうなるんだろう。)
そう眉を寄せているとガラッと戸が開く。
杏「迷惑だから家へ帰れと即答された!帰るぞ!!」
「え!お家って……実弥さんは…?」
杏「 "不死川" だ!彼はとっくに帰っていたぞ!!」
杏寿郎はハキハキと答えながら嬉しそうに桜を横抱きにすると 一度ぎゅっと胸に抱き寄せてから部屋を出た。