第50章 すれ違い
「あの家には…あの二人には、杏寿郎さんが必要です。私と別れるのが辛いと思ってくださるのなら、二人の気持ちも想像してあげてください。二人にとって杏寿郎さんは "炎柱" ではなく、 "家族" なんです。」
父親の真意を聞いて杏寿郎の瞳の色は変わったが、今度は揺らぎだし一向に安定しない。
杏「俺にとっても君は "家族" だ。」
「…………私にとってもそうです。私だって嫌です…。でも仕方ないじゃないですか………。私達は来世を夢見ることしかできない。私達についてはもう結果が出てしまっているんです。」
桜がそう小さく言うと杏寿郎は黙り、再び桜を抱き寄せて謝るように背を優しく撫でた。
杏「もっと……沢山の "約束" をしよう。今世での別れが気にならない程に。」
その言葉に桜は気付かれないように涙を拭いながら頷いた。