第50章 すれ違い
「も、元と言えば杏寿郎さんが悪いんですよ…。答えません…。」
杏「答えられないという事は否定出来ないという事だな。」
そう言われると桜はハッとして目を開き、失言に眉尻を下げた。
正確には実弥と桜の寝室はきちんと分けられていた。
だが、桜が夜に隠れて泣いている事に気が付いた実弥は "泣く時の部屋" と言う部屋を作った。
実弥は桜の部屋には入らず、自身の部屋にも入れず、その部屋に桜が来た時だけ宥め、寝かしつけていたのだ。
(今思えばかなり甘えてしまってたな…。寝かしつけてもらうなんて幼稚園児みた、)
杏「今自分がどの様な顔をしているか君は分かっているのか。」
呆然とした声色を聞くと桜は顔をそろそろと正面に戻して杏寿郎の様子を窺った。
杏寿郎は信じられないものを見る様な顔で桜を見ていた。
「優しい兄に感謝する時の顔をしていたと思います……。」
桜がそうおずおずと答えると それが本心であると分かった杏寿郎は小さく息をついた後 眉をキリッと上げ、意志の強い目で桜を見つめた。