第50章 すれ違い
(どうしよう…。もう無一郎くんのことは話してしまおうか…。あの子相手なら納得してくれるかも……。)
「あの、無一郎くんです!変なことにならなさそうでしょう…?」
それを聞くと杏寿郎は少し驚いてから腑に落ちた顔をした。
杏「確かに時透なら安心だな。残りは君を妹のように思っている、という男か。……年上なのだな。」
杏寿郎は桜を甘やかしたい欲があった為、妹のように思っているらしい男の方が気に掛かっていた。
「年上なのは当たってるけど、本当にそういう雰囲気じゃ…。すぐ子どもを扱うみたいに頭ぽんぽんするし、抱き締めてる時も余裕があって声色が変わらないし……。」
その様子を想像すると杏寿郎は顔を顰め、奥歯を噛みしめた。
杏「…君も兄の様に慕っているのか。」
「え…は、はい。」
そう答えながら桜が少し恥ずかしそうに頬を染めると杏寿郎は目の前が真っ白になり 桜をベッドに押し倒した。
桜は予想外の展開に呆けてしまったが、すぐに眉を寄せると起き上がろうとした。
「何のつもりですか。こんな所で…しのぶちゃんも "実弥さん" も待ってるのに変な事しないでくださ、」
杏「不死川か。君に頬を染めさせたのは。」
その言葉に桜の表情は分かり易く固まってしまった。