第9章 鍛錬
杏「桜は一緒に食べないのか?」
桜は筋肉をほぐしてなんとか動けるようになったはずなのに、居間にはお膳が二つだけ。
千「えっと……、」
千寿郎はまだ良い言い訳を考えついておらず言い淀む。
『千寿郎くんごめん!お腹空きすぎてて今は目の前で冷えていくご飯を見ていられる自信がないの!客間で食べさせてくれないかな…!お願い!!』
千寿郎は断れる訳もなく……
千「…猫の世界では一人で食べるのが流行しているとか…なんとか……。」
杏「それで昼も様子がおかしかったのか!」
少し残念そうにするも納得した様子の杏寿郎。
千寿郎が座るのを確認すると待ち焦がれていたようにすぐ箸を持った。
(居間から賑やかな声が聞こえる……。)
―――「わっしょい!わっしょい!!」
「あ…、また言ってる……。」
(口の周りについたお味噌汁に気を取られて、わっしょいの意味について訊きそびれちゃったなあ…。)
「…………………。」
「…………………わっしょい…。」
一人で呟いてみる。
(さ、寂しい…………!!)
でもご飯は本当に美味しかった。
(お夕飯は何も手伝えなかったなあ…。)
(いつか三人一緒に…出来たらお父さんも含めた四人で、ご飯食べられるようになるといいな…。)
そう思いながら桜はもくもくと食べた。