第9章 鍛錬
杏「兎にも角にも、今日の鍛錬はここまでにしよう。今、千寿郎が腕によりをかけて世界で一番旨い夕餉を作ってくれている。出来上がるまでここで休むといい。」
そう言いながら微笑むと杏寿郎は桜の頭を優しく撫でる。
杏「では!俺は鍛錬の続きをしてくる!!」
杏寿郎がスッと立ち上がるのを見て桜は慌てて声をかけた。
「杏寿郎さんの鍛錬の様子見たいです!縁側に寝かせてもらえませんか!?」
杏「いいぞ!!」
杏寿郎は快諾すると、千寿郎が取り込んでくれたと思われるお布団を縁側に敷き、そこまで運んでくれた。
――――――
「………綺麗…。」
杏寿郎はしばらく木刀で基礎的な鍛錬をしていたが、今は日本刀を持って炎を纏っているように見える見事な技を繰り返し出している。
(あの日本刀が千寿郎くんの言っていた日輪刀、なのかな…。じゃあ、あの刀であの恐ろしい鬼を斬っているんだ…。)
そう思うと少しぞくりとしたけど、技があまりに綺麗ですぐにその感覚も消える。
杏寿郎は呼吸を使いこなしすぎていて、初心者の桜が見ても鍛錬には活かせそうになかった。
だが、夕餉の支度を終えた千寿郎が呼びに来るまで、片時も目を逸らさずに見入ってしまったのだった。