第50章 すれ違い
(…とうとう、だな………。)
し「桜さん、こちらへ。」
廊下で待っていたしのぶに導かれるまま一室のドアの前に立つ。
しのぶが何も言わずにその場を立ち去ると、桜は喉をこくりと鳴らして取っ手に手を掛けた。
(…………………………怖い……。)
杏「桜?」
部屋の中から気配を察知した杏寿郎に声を掛けられると桜は一度肩を跳ねさせてから深呼吸をし、思い切ったように戸を開けた。
杏寿郎は少し狭い部屋で一つだけあるベッドに腰掛けていた。
桜を見ると真剣な顔付きのまま隣に座るように促す。
桜は緊張から足が縺れそうになるのを必死に堪えながらなんとか歩き、少し距離を開けてちょこんと腰掛けた。
(やっと噂について明らかになる…。明らかになったら…関係を……精算、することになるかも……。でも、やっぱりそんな筈は、)
杏「先程は驚かせて本当にすまない。だが君も分かっていると思うが 当然このままではいられない。俺が自身の気持ちを優先したが為に随分と傷付けたようだな…。だがそれも今日までだ。きちんと話をつけよう。」
その言葉に桜の脈は速くなり、ぶわっと冷や汗が出た。