第50章 すれ違い
杏「……俺の背に隠れる事はあっても、俺からその様に隠れる必要はないだろう。指輪も何故外した。そんな事をすれば男が寄ってくる…。不死川、桜は隊士達の治療を無事に行えているのか。」
実「問題ねェよ。任務がある日は毎晩 手を握られながら口説かれてるが『仕事に専念したいから』と丁寧に断ってるしなァ。」
隊士が桜の手に触れた瞬間にいつも実弥が睨んでいた為 握られるまではいっていなかったが、実弥は敢えてそう伝えた。
杏(指輪を外し、口説かれ、仕事を理由に断っている…?何故俺を理由にしない…。長く放ったらかしにしてしまっていた間に桜に何が……、)
動揺しながら桜の左手を確認しようとするも桜の姿はすっぽりと隠れてしまっていて足元しか見えない。
―――『早く仲直りしないと心変わりされちゃうかもしれませんよ。弱ってるところに優しくされて惚れちゃった…なんて話、よく聞きますから。普段強い人ほど弱った時は無防備ですしね。』
薫の言葉が脳裏を横切ると杏寿郎は喉をこくりと鳴らした。
杏「桜、話をさせてくれ。きちんと話そう。怯えさせないと誓う。」
杏寿郎が静かな声を出すと実弥は漸く息をついて桜を振り返る。