第50章 すれ違い
実「………………あァ。……多分なァ。」
「あ!絶対守る気ないでしょ!」
桜が怒った声を出すと実弥は宥める様に笑う。
実「お前はそんな事気にせずにきちんと隠れてれば良い。……あいつらかァ。」
実弥は隊士達を見付けるとスッと笑みを消して柱の顔付きになった。
その迫力ある実弥に気が付いた隊士達はビクッと体を震わせる。
桜は人の姿に戻ると実弥の後ろに隠れるようにしながら隊士達に近付いた。
というのも、噂の抑止力が失くなったせいか桜に抱き着いたり押し倒したりする隊士が出たのだ。
幸いな事に、その時の同行担当だった無一郎が覇気が無いように見えて圧のある瞳で隊士達を見つめてくれていた為それ以上の事は起こらなかったが、それでも桜の警戒レベルは上がった。
実弥は背に隠れる桜をちらっと見ると隊士達を睨む。
実「妹に何かしたら…どうなるか分かってんだろうなァ……?」
その眼力と人相の悪さに隊士達は喉をヒュッと鳴らした。
(…妹……ふふ。妹だって。実弥さんも兄妹みたいに思ってくれてたんだ。)
「ありがとう、お兄ちゃん。」
桜は背伸びをして実弥にこっそりと耳打ちすると再び背に隠れる。
一方、桜に甘えられた実弥は暫く表情筋が上手く制御出来なくなり、隊士達を引き攣った笑顔で怯えさせ続けたのだった。