第9章 鍛錬
杏「君の力は君自身も癒やす事もできるのだろうか。」
杏寿郎はそう訊きながら、客間の畳の上にそっと桜を下ろした。
「運んでくださってありがとうございます。…はい。よく転んで擦りむいた膝を治してました。」
首だけ杏寿郎に向けながら答える。
杏「膝?」
桜はハッとした。
(転んで膝擦りむく猫っている?いない?…いないよね…!)
「とにかく治せます!!!」
杏「そうか!では、その痛みも癒せるのではないか?」
あっさり流した杏寿郎に、"この人大丈夫かな?" と思いつつも、杏寿郎が指差す自分の脇腹を見た。
「うーん…今治したら鍛錬前の筋肉に戻る気がして怖いんですよね……。」
そう残念そうに耳を伏せると、
杏「確かにそうだな。」
と杏寿郎も眉尻を下げて笑った。