第50章 すれ違い
実「………俺には俺の戦い方がある。お前には関係ねェだろォ。」
「不死川さんがいくらそう思っていても私は心配しちゃいます。だから…、」
そう言っている途中で実弥は突如桜の左手を掴んだ。
驚く桜を余所に実弥は細い薬指を凝視する。
実(指輪がねェ…。この前会った時 煉獄の指にも無かった。)
し「桜さん、軽症ではありますが他にも患者がいます。来て下さい。」
しのぶはそう言うと実弥から引き剥がす様に桜の右手を引き、その場を後にした。
しかしその後、距離を取らせようとするしのぶの努力虚しく 桜が居る間に実弥が訪れる日は多くなり、二人は徐々に長い時間 会話を交わすようになっていったのだった。
―――
そんな事を思い出しながら桜は自身の膳に視線を落とす。
(まさかしのぶちゃんが "実弥さん" がいる事を隠す為に鴉を飛ばしてたとは…最近は諦めたみたいだけど……。)
桜は自身を心配してくれる無一郎を見つめ返し、気を引き締めてから笑みを浮かべた。
(私にはやる事があるんだ。元々、杏寿郎くんと幸せになる為にここへ来たんじゃない。寂しいなんて言ってる暇はない、頑張ろう。)