第50章 すれ違い
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隊一「本当だって。蝶屋敷で風柱様とあの桜さんが仲睦まじそうに話をしているのを見たってやつが俺以外にも沢山いる。」
隊二「俺も見たぜ。だけどあれは……、」
隊一「ああ、風柱様はともかく桜さんは慕ってる風ではなかったな。」
隊三「じゃあ俺にもまだ可能性があるってことだな!!」
男がそう言うと他の隊士は猛反論する。
一方、その任務に同行していた杏寿郎は自身の妻がその様な噂の的になっている事など露知らず 最近よく話をしている女隊士と共にいた。
隊三「そういえば炎柱様と噂になっていた時もあったよな。」
隊一「名字も同じだしかなり広まってたけど どちらも噂に上がってた指輪をしてないし、あの誠実そうな煉獄さんが妻を持ちながら他の女にあんな顔で接するはずもない。」
隊二「やっぱりただの噂だったんだ。初めての同行が炎柱様だったらしいし、その時に勘違いされたんだろ。多分親戚かなんかなんだよ。」
そう話す視線の先では若い女隊士に向かって酷く優しい笑顔を浮かべた杏寿郎の姿があった。
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「ごめんなさい。今は自分の仕事で精一杯で……。」
隊「では余裕が出来るまで俺待ちます!!」
「あ!ちょっと……、」
桜は杏寿郎の名を出せなくなり、隊士達のアプローチを仕事を理由に断るようになっていた。