第50章 すれ違い
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遡ること一週間と少し前―――…、
し「桜さん……今日はいらっしゃらなくて良いと言ったはずです。」
そう言うしのぶの後ろには風柱の不死川実弥が立っていた。
「ご、ごめん…。鴉から連絡を受け取った時もう近くまで来てたから重症な人がいなくても治してしまおうと思って……。」
そう言いながら恐る恐る実弥の傷に目を遣る。
(どう見ても重症……。)
しのぶは度々『今日は来なくていい。』という連絡を桜に寄こしていた。
そしてその日、桜はその理由を漸く見付けたのだった。
(お姉さんに似てる私を不死川さんに会わせたくなかったんだ…。)
し「あっ!桜さん!!」
「診せてください。……何でこんな傷を…。」
桜は制止する様に声を掛けたしのぶの頭を撫でながら横を通り過ぎると実弥の傷を見て辛そうな顔をする。
そして優しい表情で慈しむ様に傷を撫でていくと実弥は少し動揺したのか口を薄く開いて固まったまま桜のその表情を見つめた。
「無理はいけませんよ。柱合会議の時もそうでしたがご自分が傷付くことに慣れすぎているように思えます。もっと体を大事にしないと…。」
そう心配そうな顔を向けると実弥は漸く瞬きをする。